長岡弘樹さんの「教場0」「傍聞き」が人に勧めたくなるほど面白かったのでレビューします。

 

▼傍聞き

消防士や刑事など社会的に役割を持つ人々を主人公に、その業務に絡む人生の一場面を切り取った短編集。どれもそれぞれの課題は残されたまま、何かが大転換するわけではないが、その人の心に転機になるような変化が起き、じんわりと温かい読後感を残す。一つ一つちょっとした謎が仕掛けられている。その部分だけ、少し不自然な作り物っぽい感じがしてしまったが、それでも全体的には、滑らかな展開で上手い。

 

 

傍聞き (双葉文庫)

傍聞き (双葉文庫)

 

 

 

 ▼教場

 

このミステリーがすごい! 2014年版』にて第2位にランクインした、長岡弘樹『教場』シリーズ第三弾。警察学校を舞台とした作品で、シリーズ第二弾『教場2』では風間教場の生徒の卒業でラストが締められた。読者から「風間教官が刑事だったころの話も読んでみたい」という声が寄せられるほど人気の高いシリーズであり、第三弾は読者の期待に応えた教官・風間の刑事時代の物語となっている。 誰が事件を起こしたのかではなく、事件はなぜ起きたのかを新米刑事が追う警察ミステリー。過去シリーズ同様、本作も短編集で、事件の模様が冒頭に描かれる。各話の主人公はいずれも指導官・風間の下についた新米刑事たちで、風間の指導を受けながら事件の謎を解き明かしていく。

 風間は彼らを恫喝するようなことはない。だが「こんな謎も解けないなら、交番勤務からやり直せ」と静かに言い放つ。風間道場の卒業生たちは例外なくエース級の刑事として活躍している中、道場の落第生というレッテルを張られやしないかと不安で仕方がないのもうなずける。

 緊張が走る現場に華を添えるのが、事務職員の伊藤幸葉の存在。刑事課長よりも先に風間の机を吹き始めたり、園芸を趣味にしている風間に感化され『栽培入門』の本を読んだりと、風間に純粋に憧れる彼女の愛らしさは、新米刑事に束の間の休息をもたらす。同じくほっとする読者もいることだろう。

 テンポよく読める短編だが、最終話のラスト3ページで衝撃の事件が風間に襲い掛かる。これまで のシリーズで“風間はなぜ警察学校の教官に転身したのか”は語られることはなく、すっきりしないファンも多かった。そうした不満を払しょくする内容となっており、風間の刑事としての覚悟と掲げる正義にも愕然とさせられる。ファンの期待を裏切らない作品であることは間違いない。また、本作が風間シリーズ初である読者には『教場』『教場2』を「続けて読みたい」と思わせるものとなるだろう。

教場0: 刑事指導官・風間公親

教場0: 刑事指導官・風間公親

 

みなさんは短編ミステリーは好きですか?

長岡弘樹さんの短編集はどれも傑作なので、是非他の作品も手に取ってみて下さい

 

 

教場 (小学館文庫)

教場 (小学館文庫)

 

 

 

教場 2 (小学館文庫)

教場 2 (小学館文庫)

 

 

 

赤い刻印 (双葉文庫)

赤い刻印 (双葉文庫)

 

 

 

白衣の嘘 (角川文庫)

白衣の嘘 (角川文庫)

 

 

 

線の波紋 (小学館文庫)

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にらみ

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時が見下ろす町

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